自然的親子権訴訟において、国は諸外国の親権制度を不知とした上で、欧州決議が指摘する条約違反があることを争っています

自然的親子権訴訟における国の立場(主張・反論)を発信するため、主に外交関係を以下に整理します。

国は、外国の親権制度について不知としている

 まず、原告らは1979年から始まった国際的な共同親権への遷移を説明し、特定の国の集まり(G7、G20)や特定国(米国、フランス、イギリス、ドイツ、インド、トルコ、韓国、ブラジル)の離婚後の親権制度に言及しました(訴状13〜14ページ)。これに対して、国は「不知」即ち「知らない」と答弁しました(答弁書6ページ)。

主張された条約違反とその反論

自由権規約

 次に、第819条1〜2項規定の離婚後単独親権制度が自由権規約の第3条(同等の権利の確保)、第17条1(家族に対し恣意的にもしくは訃報に干渉されない)、第23条1(婚姻の解消の際に婚姻に係る配偶者の権利の平等の確保)に違反すると主張しました(訴状23ページ)。これに対して、国は自由権規約に原告らが引用した規定があることを認めながらも、「争う」と答弁しました(答弁書8ページ)。

児童の権利に関する条約

 それから、第819条1〜2項規定の離婚後単独親権制度が児童の権利に関する条約の第5条(児童の権利行使に当たり父母が適当な指示・指導をする責任・権利・義務を尊重)、第7条1(児童は父母によって養育される権利を有する)、第9条1(児童が父母の意思に反して父母から分離されない権利)に違反すると主張しました(訴状24〜25ページ)。これに対して、国は児童の権利に関する条約に原告らが引用した規定があることを認めながらも、「争う」と答弁しました(答弁書8ページ)。そして、原告らが指摘した2019年2月頃の国連児童の権利委員会の総括所見の記載があることを認めながらも、「共同親権制度の許容について、具体的に国連から韓国を受けている」こと、「無視することができない」こと、「「子どもの最善の利益にがっちする場合には(外国籍の親も含めて)子どもの共同親権を認める目的で、離婚後の親子関係について定めた法律を改正する」ことが速やかに求められる」ことを争いました(訴状26ページ、答弁書8ページ)。

ハーグ条約関係

 原告らは、「アメリカは、平成21年(2009年)に発生したデビット・コールドマン氏の子どもがブラジル人の妻に連れ去られ帰国された問題を発端に、平成26年(2014年)7月、いわゆるゴールドマン法が成立した。これにより、子供の連れ去りについての問題解決に取り組まない国に対し、様々な外交制裁を科すことが可能になった。平成27年(2015年)6月には、アメリカの下院外交委員長より、日本はハーグ条約を履行しておらず、制裁対象国に加えるべき旨が述べられ、同年8月の米紙ワシントンポストの社説は、子の連れ去りの問題解決に積極的に取る組んでいない国の代表として日本をあげていた」ことを(訴状37〜38ページ)主張しました。これに対して、国は「不知」即ち「知らない」と答弁しました(答弁書14ページ)。

 そして、「平成30年(2018年)5月16日、アメリカ国務省は、連れ去り事案の長期化や子の引き渡しの効果的な執行手段がないことなどを理由に、日本をハーグ条約に基づく義務の不履行国に認定するに至った」ことを主張しました(訴状41〜42ページ)。国はこれに対し、不履行国として認定されたことを認めながらも、「連れ去り事案の長期化や子の引き渡しの効果的な執行手段がない」ことを否認ないし争うこととしました(答弁書15ページ)。

欧州書簡と表敬訪問

 また、原告らは欧州の「在日大使が2018年3月6日、上川法務大臣宛てに講義の書簡を送付し、同年4月27日には、同法務大臣を表敬訪問した」こと、「日本人と離婚した外国人が、裁判所により面会交流と宿泊の権利が認められたにも関わらず、その実現に苦労し、子供との関係を維持できない現状を在日大使が法務大臣に直訴するという異例の対応であった」ことを主張しました。これに対し、国は書簡の提出と一人の大使の表敬訪問を認めたが、「日本人と離婚した外国人が、裁判所により面会交流と宿泊の権利が認められたにも関わらず、その実現に苦労し、子供との関係を維持できない現状」を否認ないし争うこととしました(答弁書15ページ)。

小括 指摘された条約違反、国の答弁と欧州決議の関係

 まず、2020年7月8日に採用された欧州決議は、児童の権利に関する条約の違反(恐らく5条と7条違反)があることを前提に、「日本法に於いて共有あるいは共同監護をなし得ない」としました。そして、児童の権利条約「締約国の義務、特に、子どもの為にならない場合を除き、恒常的に、両方の親と個人的な関係と直接的な接触機会を維持する権利を強調するよう要請」しました。この点に関して、日本の当局に対し,「国の法制度に必要な変更を導入せよとの国際的な勧告に従い,親の関係が解消した後に共有または共同監護の可能性を導入し,以て国内法を国際公約と合致させ」、「自ら批准したUNCRCにおける約束を守るよう勧告」しました。即ち、国は欧州決議について把握しているところ、頭書事件においては、児童の権利に関する条約第5及び7条の違反があることを争っています。

 その上、欧州決議は日本について「親の面会権と訪問権は大幅に制限されているか存在しない」としました。これに関連して「親の面会権と訪問権を制限または完全に拒否することは、UNCRCの第9条に違反する行為である」とした上で、日本の当局に対し、「面会権と訪問権についてUNCRCにおける日本国の義務を確実に反映させる」ことを勧告しました。即ち、国は欧州決議で児童の権利条約第9条の違反についての指摘を把握しているところ、頭書事件においては、児童の権利に関する条約第9条の違反があることを争っています。

 また、欧州決議は日本での子の連れ去りに関して、「これらの請願は日本が,裁判所が1980年ハーグ条約の手続きに従って子どもを返還する決定をした際の執行がずさんであること,また面会権と訪問権の強制執行の方法が未整備であることにより,以って欧州連合市民である親が,日本に居住する彼らの子どもたちと有意義な関係を維持することを阻害している」ことを指摘しました。そして、これらの欠陥について、「子ども達のための人権原則は日本政府による国家的行動に依存して」おり、「多くの立法および非立法措置が,両方の親に対する子どもの権利を保護するために、ことさら必要」であるとしました。即ち、国は欧州決議でハーグ条約に違反しているから、法整備をすべき旨の指摘を把握しているところ、頭書事件においては、「連れ去り事案の長期化や子の引き渡しの効果的な執行手段がない」ことを否認ないし争っています。

総括

 上記を総合すると、日本は、複数の国際の場面において、具体的な条約違反(児童の権利に関する条約やハーグ条約)を指摘され、政府もこれらの厳しい批判があることを国会で認めているにも関わらず、頭書事件においては、これらの条約違反があることを争っています。即ち、国の民事裁判と国会答弁が矛盾ないし乖離しているばかりでなく、国際社会の条約違反の懸念を無視してまで、国賠訴訟で答弁しているようです。この矛盾は関係各国ないし監督機関に周知すべきだと考えるので、まとめました。

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