離婚等請求事件

千葉家庭裁判所松戸支部

平成24年(家ホ)第19号

平成28年03月29日

原告 X
原告訴訟代理人弁護士 蒲田孝代
萩原得誉
被告 Y
被告訴訟代理人弁護士 喜田村洋一
谷英樹
杉山程彦
横粂勝仁
上野晃

主文

  1. 原告と被告とを離婚する。
  2. 原被告間の長女A(平成××年××月××日生)の親権者を被告と定める。
  3. 原告は被告に対し、長女を引き渡せ。
  4. 被告は原告に対し、原告が長女と別紙「面会交流の要領」記載のとおりの内容で面会交流をすることを許さなければならない。
  5. 原告と被告との間の別紙年金分割のための情報通知書≪略≫記載の情報に係る年金分割についての請求すべき按分割合を〇・五と定める。
  6. 原告のその余の請求を棄却する。
  7. 訴訟費用は各自の負担とする。

事実及び理由

請求

一 原告(主たる請求)

  1. 主文一項、五項同旨
  2. 原被告間の長女A(平成××年××月××日生)の親権者を原告と定める。
  3. 被告は原告に対し、長女の養育費として、長女が成人に達する日の属する月まで、毎月一〇万円を支払え。
  4. 被告は原告に対し、五〇〇万円及びこれに対する平成二四年四月一日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二 被告(予備的附帯請求)

 主たる請求が認容され、被告が長女の親権者となった場合、

  1. 主文三項同旨
  2. 原告と長女の面会交流に関し、別紙共同養育計画案≪略≫に基づき、時期、方法等を定める。

事案の概要

  1. 原告と被告は平成××年×月××日に婚姻した夫婦であり、両者の間には長女A(平成××年××月××日生)がある。
  2. 原告は、被告の原告に対する身体的・経済的・精神的・性的暴力により、原告と被告の婚姻関係は破綻したとして、被告に対し、離婚及び慰謝料五〇〇万円の支払を求め、附帯処分として、養育費の支払及び年金分割を求めた。
  3. また、原告は、長女の親権者につき、長女が健康や成長に問題がなく、原告と共に安定した生活を送っていること、原告の両親が長女の養育について協力しており、養育環境が整っていること、長女の主たる監護者が原告であったこと、本件に先立つ監護者指定の審判において、原告が監護者と指定されていることなどから、原告と指定すべきであると主張した。
  4. 被告は、原告の主張する離婚原因を全て否定した上、長女の利益を第一に考慮して離婚を望まないため、請求棄却を求めると述べた。
  5. なお、被告は、予備的に、長女の親権者について、被告と定めるべきであると主張し、その場合の附帯処分として、長女の引渡しのほか、原告と長女の面会交流に関して、別紙共同養育計画案≪略≫に基づき、時期、方法等を定めることを求めた。

判断

一 ≪証拠略≫、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

  1.  婚姻当時、被告は○○に勤める国家公務員で、原告は○○に勤める国連職員であった。原告は、婚姻後の平成一八年一二月、東京都内に住む被告と同居するため、国連を休職して帰国した。
  2.  原告は、平成二〇年一〇月、○○大学大学院(博士課程)に入学し、○○県○○内の○○キャンパスに通うようになった。
  3.  被告は、平成二一年四月から○○に出向することになり、原告も被告に従い、長女を連れて○○に転居した。これにより遠距離通学を余儀なくされることとなった原告は、被告が原告の都合を考慮することなく、自ら地方勤務を希望した結果だと不満に思った。
  4.  休職期間の満了が迫っていたことから、原告は、平成二一年春以降、国連への復職活動を始め、多くの空席ポストに応募したが、復職先を得ることはできなかった。他方、被告は、平成二一年七月、○○の○○に任命された。
  5.  原告と被告は、共に自己実現の意欲が高く、互いに相手は自分の仕事や研究の重要性を十分に理解していないと感じていた。また、原告と被告は、価値観、倫理観、経済観等の違いから、激しい口論をすることが度々あった。このため、原告と被告の夫婦関係は、平成二一年ころには、険悪な状態となっていた。
  6.  被告は、平成二二年三月から、それまでの仕事一辺倒の生活を改め、家事や育児の分担を大幅に増やし、同月一日から日記を付けはじめた。また、被告は、自分で手続を取り、平成二二年四月一日以降、それまで通っていた○○をやめさせて、長女を○○保育所に通わせるようにした。
     このころ、大学院に通うため、原告が長女を連れずに数日間○○の実家に帰ることが何度かあったが、被告はその間、ベビーシッターを利用するなどして、一人で長女の監護にあたっていた。
  7.  平成二二年四月三〇日、原告は、ストレス性腸炎との診断を受けた。
  8.  平成二二年五月一日、原告と被告は朝から喧嘩を始め、被告はテープレコーダーでその模様を録音しようとした。このため、原被告間でテープの奪い合いとなり、それをきっかけとして、警察官を呼ぶ騒ぎに発展し、原告と被告は別々に警察官の事情聴取を受けた。
     同日夜、被告は、離婚給付等契約公正証書の原案を作って原告に示し、離婚を申し出た。これに対して原告は、後日返答する旨答えた。
     同書面には、長女の親権者を被告として離婚すること、養育費は被告が負担すること、被告は原告が長女と面会交流することを認めること、原告は被告に対し、○○の慰謝料を支払うこと等が記載されていた。
  9.  平成二二年五月二日、被告は長女と○○に遊びに行った。同月四日、被告と長女が○○に行き、後から原告も追いかけて行った。同月五日、被告と長女は、○○にある被告の叔母の家に遊びに行った。
  10.  平成二二年五月六日、被告は仕事に出かけ、夕方五時半に長女を保育所に迎えに行ったが、長女はおらず、帰宅したところ、原告は、長女を連れて自宅を出ていた。
     被告がメールをチェックすると、体調が悪いので実家に帰る旨の原告のメールがあり、被告は急いで原告の携帯に電話をしたが、繋がらなかった。そこで、被告が原告の実家に電話をしたところ、原告の母が出て、原告も長女も返さない旨述べた。
  11.  その後、被告は、長女を取り戻したい一心で、自分の両親や弁護士に相談し、平成二二年五月七日には休暇を取って弁護士に相談に行き、そのまま○○にある実家に帰り、翌八日には原告の父と会って長女を被告の実家に預けて欲しいと頼んだ。
  12.  原告は、平成二二年五月六日以降、長女と共に○○の実家で生活するようになったが、被告の要望に応え、平成二二年五月一五日、同月二二日、同月二九日、同年六月六日、被告が○○内で長女と面会することを認めた。
     この間の、同年五月二九日及び同年六月六日、被告は原告の父と会って話をし、長女を返すよう強く迫った。
  13.  その後の面会交流は、平成二二年七月四日、○○動物園で実施された。
  14.  平成二二年七月一六日、原告は、被告を相手方として、配偶者暴力に関する保護命令申立事件を千葉地方裁判所松戸支部に申し立てたが、同年九月一四日、同申立てを取り下げた。
  15.  平成二二年九月上旬、離婚後片親と会えなくなる子供の現状を特集したNHKのテレビ番組で、被告が提供した長女の映像が放映され、原告はそれを見た。長女の映像は、目の部分にぼかしが入っており、近親者以外の者には長女と特定できないものであったが、原告は、被告が長女をメディアに露出させたことに強いショックを受けた。
  16.  平成二二年九月二六日、○○市内のホテルで、被告は長女と面会した。しかし、その後原告は、被告が長女と面会するのを拒むようになり、その後は、被告が週に一回長女と電話で話すことだけを認めていたが、平成二三年三月二一日に被告が原告方を訪れ、長女との面会を要求し、警察を呼ぶ騒ぎが起きた後は、被告が電話で長女と話すことも拒むようになった。
  17.  被告は、平成二三年春に○○での職を辞して○○に復帰し、○○県○○市の実家で両親と暮らすようになった。
  18.  平成二三年、被告の申し立てた子の監護者指定及び子の引渡し申立事件並びにこれらを本案とする審判前の保全処分、原告の申し立てた子の監護者指定申立事件が、いずれも当庁に係属した。
     当庁は、平成二四年二月二八日、長女の監護者を原告と定め、被告の申立てをいずれも却下する審判をし、同審判はその後確定した。
     その後、被告は、二度にわたって、子の監護者の変更を求める申立てを当庁にしたが、いずれの申立ても却下された。
  19.  原告は、平成二三年九月に○○大学院の博士課程を修了し、同大学院の客員共同研究員、○○大学大学院の特任講師を経て、平成二六年五月から、○○に勤務するようになり、平成二七年六月からは、○○として勤務している。原告の勤務時間は、月曜から金曜の九時から五時までであり、これ以外にも原告は、大学の非常勤講師として、短期間集中して(毎週土曜日などに)授業を行うこともある。原告の平成二七年分の給与収入は×××万××××円であった。
     原告は、現在、○○の実家に比較的近い○○内のマンションで、実家の両親の援助を受けつつ、長女と二人で暮らしている。長女は、住居近くの○○小学校の二年生で、学校生活に適応し、元気に通っており、年齢相応の心身の発達を遂げている。母子関係にも特段の問題はみられない。
     原告は、被告と復縁する意思は全くなく、離婚後は、長女の親権者となることを希望しており、被告と長女との面会交流については、FPIC等の第三者機関の支援が不可欠であり、その頻度は月に一回、二時間程度とすべきと考えている。
     なお、原告は、平成二三年秋の家庭裁判所調査官の調査の際には、被告と長女の親子関係は良かったと認めていた。
  20.  被告は、平成二三年春から○○に勤務していたが、現在は、○○に出向し、○○をしており、平成二八年四月から○○を担当する予定でいる。被告の○○は週に一回の予定であり、それ以外の時間は、被告が自分の裁量により自宅で勤務することも可能である。
     被告は、○○市の実家で、農業に従事する両親と同居している。両親は健康である。被告の実家は、広い敷地に建つ設備の整った住宅であり、自然に恵まれた環境にある。実家の近くには、○○の叔父と○○を務める叔母夫婦が暮らしている。日中被告が仕事で出かけている間は被告の両親が長女の監護にあたる予定であり、万一被告の両親が留守にする場合でも叔父夫婦に長女を預かって貰うことができる。
     被告は、被告が長女の親権者に指定された場合も、原告と長女の交流を維持しておくことが長女の利益に資するとして、原告に対し、年間一〇〇日程度の面会交流を保障する旨申し出ている。そして、被告は、被告が合理的理由なく、その約束を守らない場合は、それが親権者を原告に変更する事由となることを認めている。

二 離婚について

 上記一で認定した事実によれば、原告と被告の婚姻関係は、共にプライドの高い原告と被告が、事ごとに衝突を繰り返した結果、険悪な状態となって別居するに至り、その後、長女の監護者を巡る紛争を繰り広げるうちに相互不信が募り、遂に破綻するに至ったものと認められる。
 そうすると、婚姻破綻の原因は双方にあり、いずれか一方に特に非があるということはできないから、原告の離婚請求は理由があるが、慰謝料請求は理由がないと言うべきである。
 なお、原告は、被告の原告に対する身体的・経済的・精神的・性的暴力を婚姻破綻の原因及び慰謝料の発生原因として主張するが、そのような事実を認めるに足りる証拠はない。

三 親権者について

 上記認定の事実によれば、原告は被告の了解を得ることなく、長女を連れ出し、以来、今日までの約五年一〇か月間、長女を監護し、その間、長女と被告との面会交流には合計で六回程度しか応じておらず、今後も一定の条件のもとでの面会交流を月一回程度の頻度とすることを希望していること、他方、被告は、長女が連れ出された直後から、長女を取り戻すべく、数々の法的手段に訴えてきたが、いずれも奏功せず、爾来今日まで長女との生活を切望しながら果たせずに来ており、それが実現した場合には、整った環境で、周到に監護する計画と意欲を持っており、長女と原告との交流については、緊密な親子関係の継続を重視して、年間一〇〇日に及ぶ面会交流の計画を提示していること、以上が認められるのであって、これらの事実を総合すれば、長女が両親の愛情を受けて健全に成長することを可能とするためには、被告を親権者と指定するのが相当である。
 原告は、長女を現在の慣れ親しんだ環境から引き離すのは、長女の福祉に反する旨主張するが、今後長女が身を置く新しい環境は、長女の健全な成長を願う実の父親が用意する整った環境であり、長女が現在に比べて劣悪な環境に置かれるわけではない。加えて、年間一〇〇日に及ぶ面会交流が予定されていることも考慮すれば、原告の懸念は杞憂にすぎないというべきである。
 よって、原告は被告に対し、本判決確定後、直ちに長女を引渡すべきである。

四 面会交流について

 被告は、原告と長女の面会交流に関し、「○○の共同養育に係る計画(案)」を提出している。
 その骨子は、

  1. 原告とその両親が、監視のつかない面会交流が長女の利益に適うことを認め、その旨の書面を被告に提出しない限り、面会交流は、被告が指定した機関の監視下で行う。
  2. 監視下の面会交流が終わった後は、隔週の金曜日の一九時から日曜日の一九時まで面会交流を認める。これ以外に、祝日、春の連休(四月二九日から五月五日)及び長女の誕生日について、隔年ごとに面会交流を認める。そして、原告の誕生日と年末(一二月二三日から一二月三〇日)については、毎年面会交流を認め、加えて、夏に二週間、それ以外の時期にも一週間の長期面会交流を認める。
  3. 面会交流の場所は、原則として○○、○○、○○内に限る。
  4. 開始時及び終了時の長女の引渡しは、被告の住居(○○)で行う。
  5. 国外への連れ去りを防止するため、長女の旅券は銀行の貸金庫に預ける。
  6. 一日に一回、一時間を限度として、電話での交流を認める。
  7. 被告は、被告が正当な理由なく上記面会交流に応じない場合は、それが親権者変更の事由となることを認める。 というものである。

 このうち、(1)の監視付面会交流について、被告は、監視付面会交流が非人道的で屈辱的なものであることを原告に理解させるために、このような定めをもうけた旨述べるが、監視付面会交流が子の利益に適わないことは自明のことであり、この定めは不要である。
 上記(2)の面会交流の頻度及び時期等については、当事者双方が面会交流の意義を理解している限り、面会交流に関する最近の研究結果からみても適切なものということができる。
 面会交流場所に関する上記(3)の定めは、双方の居住地に照らせば相当である。
 引渡し場所に関する上記(4)については、原告の抵抗感を考慮すれば、被告の実家とすることに問題がないとはいえないが、最寄り駅などを待ち合わせ場所とした場合に生じ得る待ち時間や悪天候の場合の不都合等を考えれば、実施回数の多い本件の場合、できるだけ長女の負担を減らす方策として、長女の居住地を引渡し場所とする上記定めは合理的というべきである。
 長女の旅券は、親権者となる被告において管理することになると考えられるところ、被告が長女を連れて国外に移住する可能性は低く、本件において、上記(5)の取決めの必要性は認められない。
 上記(6)及び(7)はいずれも相当である。
 そこで、以上を前提として、原告と長女の面会交流の要領を別紙「面会交流の要領」記載のとおりとする。

五 年金分割について

 上記認定の事実によれば、原告と被告との間の別紙年金分割のための情報通知書≪略≫記載の情報に係る年金分割についての請求すべき按分割合は、これを〇・五と定めるのが相当である。

よって、主文のとおり判決する。

 (裁判官 庄司芳男)

別紙 面会交流の要領

一 定期的な面会交流

  1. 本判決確定後、最初に来る金曜日の一九時から日曜日の一九時までを一回目として、以降、隔週の金曜日の一九時から日曜日の一九時まで、面会交流を行う。
  2. 面会交流の場所は、原則として○○、○○、○○内に限る。
  3. 開始時及び終了時の長女の引渡しは、被告の住居(○○)で行う。

二 不定期の面会交流

  1. 定期的な面会交流の外、祝日、春の連休(四月二九日から五月五日)及び長女の誕生日について、隔年ごとに面会交流を認める。そして、原告の誕生日と年末(一二月二三日から一二月三〇日)については、毎年面会交流を認め、加えて、夏に二週間、それ以外の時期にも一週間の長期面会交流を認める。
  2. この場合の面会交流については、その具体的日時、場所、方法等は、長女の福祉に配慮し、事前に当事者双方が協議して定めることとする。

三 電話での交流

 一日に一回、一時間を限度として、電話での交流を認める。

四 被告の不履行の場合の特則

 被告は、被告が正当な理由なく上記面会交流に応じない場合は、それが親権者変更の事由となることを認める。
 別紙 年金分割のための情報通知書≪略≫
 別紙 共同養育計画案≪略≫

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