第177回国会 衆議院 法務委員会 第7号

衆議院法務委員会第7号(2011年4月19日)

001 奥田建

 これより会議を開きます。

 内閣提出、民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省民事局長原優君、厚生労働省大臣官房審議官篠田幸昌君、厚生労働省大臣官房審議官石井淳子君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

002 奥田建

 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

003 奥田建

 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局豊澤家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

004 奥田建

 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

005 奥田建

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。あべ俊子君。

006 あべ俊子

 こんにちは。自由民主党のあべ俊子でございます。

 今回の民法等の一部を改正する法律案、これは私は本当に賛成でございまして、特に、主な要点といたしまして、親権の停止制度、ここの部分は本当に現場からは必要とされたところでございます。また、未成年後見制度の見直しに関しまして、法人または複数の未成年後見人の許容、これに関しましても、民法上、非常に必要とされてきた部分であります。また、児童相談所、これからは児相というふうに略させていただきますが、この親権代行につきましての規定、さらにはまた離婚後の家庭の面会交流権、ここの部分は非常に賛成する部分でございます。

 特に、聖域とされました民法の親権制度の見直しに踏み切ったということは、私は非常に評価されるものだと思っております。現行法の規定が不十分だった部分が多くございまして、特に、親権の部分で施設長の監護に対する権限がどこまでなのか。これは、児童福祉法の四十七条二項のところでございますが、親権者と施設長、どちらが優先されるかということが、児童虐待の児童に対して非常にあいまいであったという部分が大きいと思っております。また、一時保護された児童に関しましては、児童相談所のその権限があいまいであった、こういう観点から、私は、今回の親権停止、二年を限度としてということでございますが、非常に重いものだと思っております。

 親権剥奪という形になってしまったときに、それはこれまで三十五年間で三十一件しか出てこなかったという問題がございます。大臣、これに関しては、なぜこんなに件数が少なかったというふうにお思いでいらっしゃいますか。

007 江田五月

 親権のあり方というのが大変な社会問題になって、親権者が親権を適切に行使しない、そういう事例が次から次へと本当に続いたわけですよね。しかし、親権の喪失となるとこれはもう完全に切れてしまうわけで、やはり、そこまで大きな喪失という効果をもたらす手続しか用意されていないということになると、どうしてもそこは、鶏頭を割くに牛刀をもってす、これではやはり牛刀は使いにくいということになって、これまで使われなかったんだと思っております。

 ということで、もう少し、あるいは大いに使いやすい制度をつくろうと、委員が本当に深い理解をしていただいていることに感謝を申し上げます。

2頁

008 あべ俊子

 大臣がおっしゃったように、親権喪失というのは余りに重過ぎて、しかしながら、親と引き離す必要があるのではないかという現場の声を受けて、また、親子の再生支援という観点からも、この停止については私は賛成するものでございます。

 特に、私は看護師でございますので、医療の現場で医療ネグレクトという場面にいろいろな場面で出会いました。大臣も御存じのように、報道で言われています、子供が中耳炎なのに治療を受けさせない、軽いものでは、インフルエンザの予防注射を拒否する、また、宗教上の理由で手術、輸血などを拒否するということをさまざま現場で見ていた中にありまして、親権の剥奪、親権停止を一時的にすべきであったという事例もあったわけであります。

 しかしながら、私が、親権停止に、また医療ネグレクトに関して、子供にとって、命を守るために親権停止が必要だというふうに判断した場合に、この停止を行ったとき、また手術費用に関しては、これはだれがどのように負担する形になるんでしょうか。

009 原優

 民法八百二十条の規定は、「親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」こう規定しているわけでございますが、この規定は、監護、教育の費用の負担まで定めたものではない、その費用の負担は子に対する親の扶養義務の履行の問題であると一般的に解されているところだと思います。

010 あべ俊子

 さらにはまた、例えば親権者の不当な主張などという例が幾つか出されているところでありますが、また、この親権停止に関連して、親権停止をしなければ、さまざまな、子供たちがやりたい、また行わなければいけないことに対して阻害をされているというケースが出されています。

 報道等では、特に、アルバイトで、一時親から引き離された子供たちが携帯電話を契約しようとしたら、親がそれを断り、携帯電話が持てなかった事例、また、進学をしてちゃんと勉強したいという思いがあったのに、親が子供の了解なしに、また親と一緒に今いない状況にあるにもかかわらず、勝手に退学届を出してしまった例、また、本人が、まだ未成年であるけれども、自分で住みたいと仕事をしながらアパート契約をしたにもかかわらず、親がその契約を打ち切った例などがございます。

 大臣、いわゆる本人が何をしたいかということに関して、この親権停止ではどういう影響が出ると思われていますか。

011 江田五月

 今、委員が電話の例とかあるいは学校の例とか借家の例とかをお挙げになりましたが、親権を停止しますと、これは親権者にかわる者がちゃんと指定をされる、未成年後見人、こういう者が親権者にかわって同意をして契約を結ぶことができるようになるということだと思います。

012 あべ俊子

 それは特に、さまざまな虐待がございますが、身体的な虐待、性的虐待、経済虐待、さらには、子供たちの思いを妨げてしまう精神的虐待みたいなさまざまなものがある中で、この親権停止に関しては、その子たちの将来を妨げるものではない、しかしながら、親にとっては非常につらい部分もかなりあると私は思っております。

 特に、親権者の不当な主張についてということがございますが、大臣、この不当な主張についてというのはどういうものがございますか。

013 江田五月

 これはさまざまあるわけで、先ほどからの医療ネグレクトについても、私なんかも子供のころに水泳ばかりやっていまして、しょっちゅう中耳炎をしていまして、中耳炎というのは、なりたてにすぐ、ケフラールでしたか、抗生物質を飲めば治るんですけれども、そこを逃すと、本当に慢性になったら大変なんですね。

 それなのに親権者が、それは、子供がお医者さんにかかるのを、どういう理由でもよろしい、いや、自分は親権者としてそういうことに同意をしないと。これはもう幾らでもあると思います。不当な親権の行使の主張をして、子供の利益に反する結果をつくり出す。例は、今私は医療ネグレクトのことしか挙げませんが、幾らでもあると思います。

014 あべ俊子

 本当に大臣のおっしゃるとおりでございまして、不当な介入ということに関しては議論がさまざま分かれるところでありまして、特に私がこれはどちらにとって大切なのかよくわからないことの一つに、例えば特別支援学級の例があります。

 自分の子供はそこまで障害がない、普通学級で学ばせたい、しかしながら、子供が軽い知的障害があったり発達障害があったりするときに、通常の学級ではパニックを起こしてしまう、どう考えても、きめの細かい、その子に合った対応が必要であるから、特別支援学級に入れた方がいいというふうに判断を例えば児童相談所などがしても、親はそうではないと言ったときに、子供にとっての児童の福祉ということが、本当にどちらが正しいかは非常に難しい部分があると思っています。これは今回の法案を可決することに妨げになるものではございませんが、この議論は私は続けていかなければいけないと思っております。

 大臣、これについてお願いいたします。

015 江田五月

 特別支援学級がいいのか、統合教育といいますか、一般の学級がいいのか、これは本当に難しいことで、一般論としては、障害を持った子供たちも一緒にみんなと同じクラスで学ぶことが普通の子供たちにとってもいいというような、そういう教育の場になっていけばいいと思うんですが、なかなか現実にそうならない場合と、それから障害が非常に重くて、先生にとっても周りの子供たちにとっても余りにも負担になり過ぎるというような場合もあるだろうと思います。

 そこの判断というのは、これは私がここでこっちがよろしいとかいうようなものではなくて、それぞれの現場現場でみんなで考えながら、悩みながら決めていくことだと思いますが、一番の基本は、やはり親が親権者ですから、その親が子供のために何がいいかというのを一生懸命考えて、そして判断をする。その親の判断が、子供のためよりも、むしろ逆に、自分のメンツのためとか、あるいはもっと違った理由によって子供の福祉につながらないような判断の場合にこれは介入をする必要が出てくるかと思いますが、一番はやはり親が本当に子供のことを考える、これが基本だと思います。

016 あべ俊子

 おっしゃるとおりでございまして、本当に子供にとって何が優先順位であるかということを判断していくことは非常に難しいけれども、継続的に考えていかなければいけないことだと私は思っております。

 また、今回の法案に関して非常に評価される部分が、未成年後見人の法人または複数改正であります。特に未成年後見人は、非常に役割が重過ぎるということで引き受け手が非常に確保が難しかったという観点や、引き受ける方々が負担や責任が余りにも重過ぎるということでなかなか確保ができなかったところでありますが、この法人、特に児童養護施設、NPO法人などが考えられますが、この未成年後見人の改正に関して、現場でどういう声が大臣のところに上がっていましたでしょうか。

017 江田五月

 申しわけないんですが、私自身のところに現場の声が上がっているというのは、私もついこの間就任したばかりなので届いていませんが、そうでなくて、歴代の法務大臣のところへ上がっているということでいえば、それは例えば、いろいろな社会福祉法人が営むさまざまな施設などから、十八歳、十九歳、これはまだ未成年、しかし施設には十八になったらもう入れておくわけにいかない、だけれども、やはりそれは社会にぽんとほうり出すのではなくて、自分のところで今まで見てきたし、気心もよく知っているし、彼も彼女も私たちを頼っている、そういうときにこういう法人が監護の、あるいは教育のお手伝いをさらに続けてやりたい、こういうような声はいっぱい上がってきているものと承知をしております。

023 石井淳子

 お答え申し上げます。

 まさに親権停止をされている二年間、この間にいかに親子の再統合をきちっと図っていくかということが重要でございまして、まさにそのための親子再統合のプログラムの開発など、私ども一生懸命取り組んでいるところでございます。

 現在、多様なプログラムの実施状況とかその効果等について研究を行っておりまして、保護者指導に関する調査、検証の成果を踏まえまして、さらに児童相談所が保護者指導あるいは支援に適切に取り組めるように努めてまいりたいというふうに思っております。

024 あべ俊子

 ぜひともそこの部分はお願いしたいというふうに思います。

 最後の質問になりますが、離婚後の面会交流権に関してでございます。

 平成二十年、離婚の件数は二十五万一千百三十六、平成元年よりも十万件もふえまして、二分六秒に一組が離婚をするという状態であります。離婚時に未成年の子供がいる家庭が、何とその六割の十四万三千八百三十四であります。

 そうした中にありまして、司法統計年報によりますと、面会交流の調停の申し立てが、平成十年は千七百件、平成二十年には六千二百六十一件と四倍になっておりますが、認められたのは何と四九%であります。

 特にこの面会交流権、子供の側からしますと、離婚をした一緒に住んでいない親が自分のことをちゃんと思ってくれているという確認をしなければいけない。親離れの促進、またアイデンティティーの確立の点から必要だというふうに言われているところであります。

 ここに関して、大臣、この文言が一言入った、特にこの面会交流権の必要性を大臣はどのようにお考えでしょうか。

025 江田五月

 離婚の場合にどういう取り決めをするかということの規定が十分でなかった。しかし、実際には、面会交流にしても、費用の分担にしても、これは離婚するその親同士でちゃんと約束を決めるということが望ましいことには決まっているので、家庭裁判所でも、なるべくこれを決めさせよう、決めるようにということでいろいろな努力をした。しかし、なかなかそこに至らなかったということがあります。さらにまた、そうしたことが、父と母の間の駆け引きとか、そういうものに使われてしまうというようなことがあったのが実情だと思っております。

 そこで、今回、この面会交流とか費用の分担とかについてきっちり合意をしなさいよ、さらに、その合意は子の利益のためが第一なんですよ、このことを法律に書き込もうとしているわけでございます。

 私は、離婚といえども、父であること、母であること、これは変わらないので、子供のためを考えると、やはり、私のお父さんはあそこにいる、私のお母さんはあそこで見てくれている、これは大切なことなので、基本的には、いろいろな個別の事情はあると思いますよ、あると思うけれども、基本的には、やはり面会交流というのは子供の福祉にとっては大切なことだ、これを奪うというのはよほどのことがないとやっちゃいけないことだと思っております。

 家庭裁判所でそういう合意をつくるときに、家裁には調査官がいますから、調査官は、その親子の再統合というようなことまで考えていろいろなことをやりますから、私としては、家裁調査官の仕事に大いに期待をしたいし、さらにまた、その家裁調査官が、最後に離婚がきっちり成立する、あるいは調停の場合もあるでしょう、そういうときに、一応そのいろいろな記録をつくりますので、これは想定の中には何もないんですが、そうしたものが児相その他にちゃんと引き継がれるというようなこともあるいは考えた方がいいのかな、こんなことも思っております。

026 あべ俊子

 私は、子供にとっては本当に大切なことだと思っておりますが、離婚というのはそんなに簡単にされている方は余りいらっしゃらないんじゃないかということを考えたときに、元配偶者と子供が接触するということが母親の情緒的な部分に大きな影響を与えるということも実はあると思っておりまして、ここの部分のフォローも必要ではないか。また、子供が一緒に住んでいない親に面会交流をすることによっての中長期的なその影響というのは、私はしっかりフォローも教育もカウンセリングもして、これは法律を超えた形でやっていかなければいけないと思いますので、そちらの方の整備もぜひしていただきたいと思っております。

 最後に一言言わせていただきますが、実は、阪神大震災のときに、避難所において児童虐待の報告がかなりされております。私は、今回の東日本大震災、特に避難所生活が長くなる中、児童虐待にはしっかりと焦点を当てていただき、被害者がふえないように、本当にこれからも御配慮いただきたいというふうに思っております。

 時間になりましたので質問を終わります。ありがとうございました。

027 奥田建

 次に、馳浩君。

028 馳浩

 自由民主党の馳です。きょうもよろしくお願いいたします。

 今ほど、あべさんが最後におっしゃった阪神大震災のときの児童虐待の案件というのは、詳しく言うとこういうことなんです。いわゆる避難所等においての性的虐待が随分あったんですよ。改めて、今般の東日本大震災、避難所における子供の監護についての対応というものを、やはりしっかりと目を光らせていただきたいということをまず最初に申し上げておきたいと思います。

 では、質問に入ります。

 まず最初に、現行の親権規定が定められたのはいつのことでしょうか。

029 原優

 明治三十一年に、いわゆる明治民法の第四編に親権に関する規定が設けられております。その後、戦後、新憲法が制定されまして、昭和二十二年に、新憲法の理念である個人の尊厳、男女平等の観点から改正が行われて、現行の民法の規定になっているという経緯でございます。

030 馳浩

 現行の、現在の親権内容をお示しいただきながら、それ以前の親権の内容との違いをお示しください。

031 原優

 現行の民法の第四編、親族編を見ますと、その第四章に親権という規定がございまして、第一節が総則、第二節が親権の効力、第三節が親権の喪失、こういう構成になっております。

 第一節の総則では、だれが親権を行使するかという親権行使の主体についての規定が置かれております。それから、第二節の親権の効力では、監護、教育の権利義務や財産管理などの親権の具体的内容についての規定が置かれております。それから、第三節、親権の喪失では、親権の喪失や管理権の喪失についての規定が置かれている、こういう体系になっております。

 明治民法と比較しますと、明治民法では、原則として、子と家を同じくする父親に親権があるものとされておりまして、母親に親権がある場合は制限されておりました。これは家制度の影響だろうと思います。戦後、先ほども申し上げましたが、新憲法が制定されまして、個人の尊厳や男女平等の観点からの改正が行われましたので、現行民法におきましては、親権は父母が婚姻中は共同で行使する、こういう規定になっております。それから、親権の効力や親権の喪失の規定は、現行民法と明治民法では基本的には同じ内容だと考えております。

032 馳浩

 明治以降からの親権規定の流れを踏まえると、今回の改正は、子の利益を軸に、明治時代にはない、戦後認められた親権規定を再構成したものと言ってよいのではないかと思います。そういう意味での歴史的意義を感じますが、大臣、いかがでしょうか。

 あわせて、文言も、「子の利益のために」ではなくて、子の最善の利益のためにと、もっと明確に改正すべきではなかったのでしょうか。

033 江田五月

 今、政府参考人から説明がありましたが、明治憲法というのは基本的に家というのを家族の単位にしていまして、戸主がいて、そのもとにずうっと、おい、めいまで含めていろいろな人がそこへ入っていたわけですね。そうした家の一員としての子。したがって、例えば、明治民法の中には、未成年の子の兵役出願の許可、こんなものが親権者にあったり、あるいは母の親権の行使については親族会の同意といったものがあったりしたわけです。

 しかし、これは個人の尊厳や、あるいは男女の平等ということからしておかしいということで、戦後の改革で家制度をなくして、そして戸籍というのは夫婦と子供という単位にして今の制度になったわけで、基本的には、私は、その段階で親権というのは子供のために行使するんだということになっていると理解をしたいと思いますけれども、しかし、やはり戦前からの流れがずっとあって、なかなかそこは明確でなかった。

 しかし、今回、国連でもチルドレンファーストという原則を確立しています、子供というのは未来の夢であり希望であるので、やはり子育てあるいは子育ち、これを最重要にして、親権というのはそういうことのために行使するんだということを明確にしたいということで「子の利益」といたしました。

 子の最善の利益というのは、これはもう当たり前でありまして、最善と書かなくても、「子の利益」というのは最善の利益です。逆に、書けば、最善はこうだけれども次善はこうで三善はこうでとかなったら、それはかえって何か複雑になるだけなので、「子の利益」というのは最善の利益のことなんだ、こう御理解いただきたいと思います。

034 馳浩

 わかりました。大臣の、やはり明治時代以来の親権についての社会的な背景を踏まえた流れが今日に至っているということの理解が本当によくあって、私はよかったと思います。

 実は、そうはいいながらも、平成十六年に児童虐待防止法を改正したときも、平成二十年に改正したときも、いずれも附則に、親権の一部・一時停止はすべきであると、これは議員立法で改正をしましたから、強く強く要請してきたにもかかわらず、それを抵抗してきたのは法務省なんですよ。何でこんなことになってしまったのかということを今さら言うつもりはありませんが、きょうの質問をさせていただきながら、前に向かった議論をさせていただきたいと思います。

 では、次に行きますが、本改正案の条文で面会と交流が区別して規定されているが、この両者の違いは何ですか。

035 原優

 面会といいますのは、実際に父または母が子に会うことを意味しております。交流は、それ以外に、電話による会話とか手紙による意思疎通、こういうものも含む広い概念でございまして、面会を含む広いものとして交流という用語を使っているところでございます。

036 馳浩

 交流の中にはメールも入りますね。

037 原優

 入ると考えております。

038 馳浩

 こういうところが時代の違いということだと思います。

 平成八年の法律案要綱では「面会及び交流」となっていました。本改正案は「面会及びその他の交流」と変わっておりますが、両者の違いは何ですか。「その他の」を盛り込んだ意図は何ですか。親子の接触にはその他の交流より面会が基本であると考えてよろしいでしょうか。

039 江田五月

 面会と交流の重なり部分と違う部分というのは今お答えしたとおりですが、確かに、平成八年の法律案要綱では「面会及び交流」となっていたけれども、これでは面会と交流は別物だという理解になってしまうので、面会が基本です。やはりそれは親子ですから、メールもいいですけれども、やはり顔と顔が見える関係というのがそれは一番大事。ということで、面会は基本ですが、しかし、面会だけじゃなくて、広く交流、メールもあるいは電話も手紙もいろいろある、そういう広く交流というものを大切にするんだということで、面会を基本に置きながら、その他の交流というように書き分けているので、ここは概念を正確に表示したということだと御理解ください。

040 馳浩

 平成六年の要綱試案では「面接交渉」となっています。「面会及びその他の交流」と「面接交渉」とどう違うんですか。

041 江田五月

 面接交渉という言葉は以前から使われていまして、面接交渉権というようなことを言われていましたが、何かよくわからないんですね。面接に行くというと何か、会社の面接もあるし、弁護人の被疑者の面接もあるし、そういうものじゃなくて、もっと人間的な、血の通った関係を意味したいということで面会その他の交流という言葉を使ったので、両者の内容に違いはないと理解をしております。

042 馳浩

 よりわかりやすい表現としたというふうに理解をいたします。

 本改正案の面会交流の規定は、平成六年の要綱試案の説明に示された内容を踏襲しておりますが、この要綱試案の説明には、「子の養育・健全な成長の面からも、一般的には、親との接触を継続することが望ましい。」と大変大事なことが明確に書いてありますが、この点も本改正案は踏襲しているということでよろしいですね。

043 江田五月

 委員御指摘のとおり、要綱試案にあります「子の養育・健全な成長の面からも、一般的には、親との接触を継続することが望ましい。」これは本当にそのとおりでございます。

 一般的にはというと、何か例外がいっぱいあるみたいに聞こえるかもしれませんが、例外は少ない方がいいので、よほど特殊な場合を除いては、いろいろな難問があろうとも、やはり親との接触というのは大事なことだと考えておりまして、この考え方を踏まえて今回の立法に至っております。

044 馳浩

 これを踏まえて、今回の面会交流を特出しして明記した立法の趣旨をお伺いしたいと思います。

 一部流言がありますように、裁判実務で定着している面会交流を確認するというだけなら、これは断じて納得できません。海外と比べても不十分な面会交流を積極的に推進していくという立法趣旨でなければ、法務省が言う、子の成長に親との継続的接触が望ましいという理念も絵そらごとで終わってしまうからでありますが、いかがでしょうか。

045 江田五月

 もともと、民法第七百六十六条第一項の「監護について必要な事項」という中に面会交流が含まれていると解釈されていますし、家庭裁判所の実務もそういう理解には立っている。しかし、面会交流ということが明確に条文化されていない。そこで、どうしても、家庭裁判所でこの調整を行う場合に、当事者に条文にこう書いてあるのでというような言い方ができないものですから、ついつい、離婚をする際に明確な定めが行われない場合が出てきていたんですね。

 そこで、監護について必要な事項の具体例として条文の中に明示をする、このことによって、協議上の離婚をするに際して、当事者間でその取り決めをすることを促しているんだ、これが我々国会の意思なんだ、こういうことを家庭裁判所にもよくわかっていただいて、そうした家裁での運用、そして、その運用を通じて、一般に、協議離婚する場合にもやはりそこは取り決めが必要なんだ、そういう社会の常識をつくっていこうと考えているわけでございます。

 これが書かれていないことで、そこまでまだ尋ねられていませんね。(馳委員「どうぞどうぞ」と呼ぶ)これが書かれたことによって、面会交流とか費用分担とかが、別れようとする父親、母親の駆け引きの材料になったりいろいろな紛議のもとになったり、それは違いますよと。あくまでこれは、お父さん、お母さんが駆け引きの材料なんかに使うことではないんです、子供の利益のために考えることですというので、その後、子供の利益ということ、これもちゃんと法律上書かせていただいたということでございます。

046 馳浩

 大臣、どんどんしゃべっていただいていいんですよ。なぜかというと、大臣の発言を明確に議事録にし、その議事録を最高裁にちゃんと読んでおいてほしいんですよ、私は。これまでどれほど、私もそうですが、御党の小宮山洋子さんあるいは公明党の富田茂之さんなどなど、何度も何度もこのことを言い続けながらもはね返されたのが最高裁の壁であったわけでありまして、思うところはどんどんしゃべっていただいて結構ですので、よろしくお願いいたします。

 そこで、裁判実務で、より面会交流が積極的になるようにするためにも、権利性を正面から規定して明文化した方が立法趣旨をもっと明確にできたのではないでしょうか。いかがですか。

047 江田五月

 これはなかなか難しいことで、それは人間と人間との関係は権利と義務の関係にきれいに整理ができるわけですが、しかし、なかなかきれいに整理をしてしまうと身もふたもないというようなこともまた実際にはございまして、子供の利益というのは権利義務とかいうことを超えた崇高な目的だ、そういうように私は考えております。

 面会交流というのは子の権利なのかあるいは親の権利なのか、その法的性質とは何ぞやと、いろいろ法律学者的には議論がありますが、そういう議論を超えて、やはり子の利益のために面会交流というのをしっかりやってください、こういう立法者としての願いがここにこもっているというふうに御理解いただきたいと思います。

048 馳浩

 極めて現状肯定、現状追認的な答弁だったと思います。

 実は、各国の実情もいろいろ参考に見てみました。お隣の韓国でも権利としてしっかりうたってありますね。主要国では正面から権利性をうたっておりますし、我が国が批准をした児童権利条約でも同様です。つまり、我が国の国民認識が世界標準に追いついていないと言わざるを得ません。

 今回、正面から権利性を規定して、むしろ、国民に対して、子供の利益のために必要なんですよ、こういう発想を啓蒙するという趣旨での改正をすればよかったのではないでしょうか。そして、過度の権利主張を危ぶむのであるならば、児童権利条約のように子供の権利とすればかなり回避できるのではないでしょうか。この辺、いかがでしょうか。

049 江田五月

 なかなか痛いところをずばりずばりと追及されるので答弁に苦労するんですが、非監護親と子の面会交流について、それがだれの権利なのか、権利ではないのかということについて、これは本当に議論がいろいろありまして、なかなかまとまらなかったのが実情だと私は聞いております。

 そこの議論がまとまるまで待つわけにもいかないので、そこで、まずはこういう面会交流というものをきっちり法律に書き込もう、それは子の利益のためですよということも書き込もうということで書いていますので、今、私が、これは子供の権利でございますと答えると、やや、ここまで議論してくださった皆さん方の議論を踏み越えることになるので答えませんが、しかし、私の言いたいことは恐らく理解していただけると思っております。

 委員が今挙げられました子どもの権利条約その他、国際的ないろいろな水準、そういうものは私もよく承知をしているつもりでございます。

050 馳浩

 前回の法務委員会の一般質疑のときに、あのときはハーグ条約の話でありましたが、私、こういうことを申し上げたと思うんですね。離婚をしたら夫婦の問題、離婚をしても、子供にとってお父さんはお父さん、お母さんはお母さん。私は、そういうふうな観点、まさしく子の利益を優先するという考え方に立って、もうちょっとその権利性を主張し、しかしながら、子の利益のためにも面会交流を制限することもあり得る、こういうふうにしていったらよかったんじゃないかなと思っているんですよ。

 次の質問に移ります。

 本改正案によれば、何が子の利益にかなうかの合理的判断は、第一次的には父母の協議によって行われることになります。つまり、父母こそが子の利益を判断するのに最適任者だという価値判断が根底にあると思いますが、いかがですか。

051 江田五月

 これは、やはり子供にとって親は親で、親にとって子供は子供で、その関係というのは社会の一番基礎的な家族関係なんですね。したがって、子供の利益というのは何だろうと考えるのは、それは第一はやはり御両親なんです。

 家庭裁判所で御両親がいがみ合っていても、そこは、先ほどの質問者にも答えましたが、家庭裁判所の調査官というのはいろいろなカウンセリング能力も持っているので、間に入って、そして本当に調整をしていく。これは、離婚しない結論に至る場合も、する結論に至る場合にも、ちゃんと調整をして、そして、人間関係のいろいろな、無用なもつれをなくして考えていくわけですが、家庭裁判所が入るに際しても、やはり第一義的に、あるいは第一次的に子供の利益を考えるのは父親、母親だ、この点は、世の中の父親、母親にはよく理解をしておいていただきたいと思います。

052 馳浩

 しかし、父母の第一次的判断を尊重する余り、監護権のある親が面会交流に強く反対していると、後に家裁が介入することになっても、面会交流は基本的には認められないとの結論となりやすいんです。

 事実、そう明言している審判例があります。この審判例を紹介いたします。横浜家裁で平成八年四月三十日に出された判例でありますね。読みます。「親権者である親が非親権者である親による面接交渉に強く反対している場合においては、特別の事情が存在しない限り面接交渉を回避するのが相当である」、こういう判断基準を示しております。

 最高裁にお伺いしますが、まさか現在の実務においてこのような審判例がリーディングケースになっていないでしょうね。審判の結果はもちろん別として、このような判断基準、これは否定すべきではないでしょうか。いかがでしょうか。

053 豊澤佳弘

 面会交流の可否あるいはその態様等につきましては、個々の事案に応じて、家事審判官、裁判所が個別具体的に判断する事項でございます。

 御指摘の審判例につきましては、事務当局としては、個別の審判についての意見を申し述べることは差し控えさせていただきたいと思いますが、現時点、近時の一般的な実務の取り扱いという観点から申し上げますと、一般的には、子供の健やかな成長、発達のために双方の親との継続的な交流を保つのが望ましいという、子の福祉の観点から判断がされているものと考えており、子供への虐待がある、そういった面会交流を禁止あるいは制限すべき事情が見当たらない限り面会交流が認められ、その態様や回数等につきましては、双方の親の事情あるいは親と子供の関係、あるいは子供に関するさまざまな事情、こういったもろもろの事情を総合考慮した上で回数であるとか方法等について個別的に定められている、そういった実情にあるものと理解しております。

 以上です。

054 馳浩

 最高裁の豊澤さんという人ですね、家庭局長。

 それなら、私が今紹介した横浜家裁の平成八年四月三十日のこの審判例というのは、極めて特異な例、個別の例であり、今現在は余り好ましくないというふうに考えてよいでしょうか。豊澤さんにお伺いしたいと思います。

055 豊澤佳弘

 平成八年の時点でこういった理由を付した審判が出ておることは、御指摘のとおりでございます。

 ただ、近時の審判例、二年ほど前に判例タイムズで取りまとめた、これまでの面会交流に関する審判例について調査分析した文献等、そこに引かれている裁判例等を見ましても、大勢は先ほど申し上げたような傾向にあるものというふうに理解しております。

056 馳浩

 では、改めて私はもう一回言いますね。  やはり、離婚をしても、夫婦はいたし方ない、子供にとっては非監護親と面会交流を定期的にすることがふさわしい。しかし、諸般の、それぞれいろいろな事情によって、面会交流はしない方がよいときもある。これはまさしく個別、特別な事情があってと。こういうふうな近時の判例だというふうに私は理解しようと思っているんですけれども、それでいいんですね、私の理解で。もう一回、豊澤さんにお伺いします。

057 豊澤佳弘

 近時の審判例、あるいは実務の状況、その判断の傾向というのは、先ほど私が申し上げましたとおりの傾向でございまして、今委員の御指摘のような方向にあるものと思います。

058 馳浩

 だったら、大臣、面会交流権と明確にうたってもよかったんじゃないんですかと私も思っているんですよ。いかがでしょうか。改めてお伺いします。

059 江田五月

 重ねての御質問ですが、先ほど申し上げましたとおり、いろいろな皆さんの議論を集約してここへ至っているので、私の気持ちは気持ちとして、権利という言葉を使っていない、しかし、あくまで子の利益のために、これは、周辺の皆さんも皆、子の利益のために面会交流はできるだけできるように努力をする義務を負っているんですよという理解をぜひしていただきたいと思います。

 家裁の実務の扱いについてまで私がいろいろ言うことではありませんが、家裁の決定例というのが、リーディングケース、この方向でいくんだよといって登載される場合ばかりではないので、先ほどの横浜家裁の決定例というのは一つの事例だというように御理解いただければ、私としても大変幸いでございます。

060 馳浩

 家裁の実務についてはまた後ほど詳しくお伺いいたします。

 そこで、最高裁に調査を依頼したいと思います。過去十年間の面会交流に関する家裁の審判で、面会交流の是非にかかわる判断基準を示した審判例をすべて書面により公表していただきたいと思います。

 これは、立法府から司法、裁判の独立を侵すとか圧力をかけるというものではもちろんありません。今後の立法に生かすための活動だというふうに御理解をいただいて、その調査をし、資料を出していただきたいと思いますが、大丈夫ですか。

061 豊澤佳弘

 この面会交流だけに限りませんが、家事事件と申しますのは、御承知のとおり、家庭内の問題や紛争に関するものでございまして、当事者のプライバシーに深くかかわるものでありますことから、その性質上、手続自体が非公開ということにされております。したがいまして、その結果として、その手続の中で出される判断でありますところの審判等につきましても、その調査、公表には、先ほどの観点からの慎重な配慮が必要であろうと思われます。

 このような観点からの配慮を行った上で、面会交流に関してこれまでに公表された調査研究というものの比較的新しいものとして、先ほどちょっと言及しましたが、平成二十一年に法律雑誌に掲載された、裁判官と家庭裁判所調査官が執筆したものがございます。これは、昭和三十九年から平成十八年までの面会交流に関する審判例五十九件について、その可否や頻度等についての考慮要素などを分析したものでございます。

 このほか、法務省が委託して、親子の面会交流を実現するための制度等に関する調査研究におきましては、家庭裁判所での面会交流事件の分析のほかに、民間の面会交流支援団体からのヒアリングや当事者からのアンケートが実施されており、現在その報告書が取りまとめ中であるというふうに聞いております。

 法務省の調査研究の結果等も踏まえ、今後とも、家事事件の非公開性に配慮した上での調査研究というものにつきましては、可能な検討を行ってまいりたいというふうに考えております。

062 馳浩

 るる御紹介いただきまして、では私も参考にして勉強させていただきます。ありがとうございます。

 さて、そもそも離婚後の監護に関して高いストレス状態にある親に、子の利益を判断する冷静な判断能力があるのか。しかも、学問的に離婚後の親子の交流が一般論として子供の成長にプラスであるのに、それを知らない、認めることができない親が我が国にはいかに多いかということであります。

 であるならば、家裁が介入しなければならなくなった事案において、子の監護に関して高いストレス状態にある父母の意見に左右されることなく、何が子の最善の利益かを客観的に家裁が判断することが必要ではないでしょうか。これも本改正案の趣旨の一つだと明言していただきたいのですが、いかがでしょうか。

063 江田五月

 委員御指摘のとおり、父母の協議が成立せず家裁が介入しなければならなくなった事案というのは、これは子の監護に関しても父母の間に高いストレスがあるという場合が多いだろうと思います。

 その場合に、父母の方がこんなに子供についていらいら状態にあるのに面会だ、交流だなんてとんでもないというような判断をするのでなくて、やはり、そういう状況であっても親と子というのは大切な関係ですから、面会交流を子の福祉のため、子の利益のためにぜひ実現するように努力をしよう、例外はどんな場合でもありますが、努力をしようというのが家庭裁判所の調停または審判における努力の方向だ、そのことをこの法案は示している。これはぜひ、そういうふうに家裁でも理解をしていただいて、努力をしていただきたいと私は思っております。

064 馳浩

 関連をして、一般論として、子が別居親と面会交流することが子の最善の利益にかなうわけですから、監護権のある親が面会交流に強く反対しても、特別な事情がない限り裁判所は面会交流を実現すべきだ、面会交流させることが子の利益と推定されるなどの価値判断が本改正案の趣旨としてあるということも明言できないでしょうか。いかがでしょうか。

065 江田五月

 そういう、委員が御指摘のような場合は、なかなか困難はあるかと思いますが、それでもやはり、可能な限り家庭裁判所は親子の面会交流ができるように努める、これはこの法律の意図するところだ、こう私は思っております。

 家庭裁判所の調停、審判で、より一層そうした方向で努力がなされることを期待しております。

066 馳浩

 この問題の根底には、面会交流を家裁が命じても、強制力を家裁が持たないために、家裁の権威のために、命じたくても抑制が働くことに一番の問題があるのではないかと私は見ておりますが、いかがでしょうか。

067 江田五月

 私は、裁判官をしたことはございますが、かなり古い時代でございまして、しかも、家庭裁判所に勤務をしたこともあるんですが、すぐお隣の少年事件ばかりやっておりましたので、家裁でそういう傾向が一般的に働くということが言えるかどうかは存じ上げておりません。

 おりませんが、確かに、履行の勧告とかあるいは間接強制とかいろいろあるけれども、実際に、会わせるというのを、それこそ引きずっていって、それ会えといって会わせるのじゃやはりまずいので、そこはその気になって親子が会わなきゃいけないので、そういうその気になるというのはなかなか強制でできるものじゃないので、そういうあたりを考えながら、家庭裁判所というのは、粘り強く、余り行き過ぎてもいけませんが、当事者の心のひだに分け入って、心を解きほぐしながら、いい親子関係ができるように努力をするものだと期待をしております。

068 馳浩

 ちょっと強烈なことを今から提案しますね。

 家裁の履行勧告に従わなかった場合に、民事執行法百七十二条の間接強制はできますが、現実には余り機能しておりません。そこで、履行勧告や間接強制を何回も無視したり等、ひどいケースに、児童虐待防止法の虐待事案と認定したり、人身保護法を適用して、人身保護命令を出して、罰則で担保したりすべきではないかと思いますが、いかがですか。

 関連して、不当な子供の連れ去りも虐待と言えるのではないでしょうか。ここは厚生労働省に聞いた方がいいですね、法務省に聞いてもあれですし。

 私なりにこうしたらどうかと思ってお伺いいたしますが、いかがでしょうか。

069 江田五月

 馳委員がそうして一生懸命に、履行勧告に従わなかった場合などの対応についてお考えいただくことは、大変大切だと思っております。

 確かに、残念ながら、面会交流をめぐって、父と母が対立して適切に実現されない事案があるのは事実でございます。ただ、監護親が面会交流を拒否する、これはやはりいろいろな理由もあって、面会交流の際に子を連れ去られるのではないかという不安があるとか、あるいは、離婚に至った経過の中で強いストレス、葛藤があって、もう顔も見たくもないというようなそういう気持ちもあって、たとえ子供といえども会わせたくもないというような気持ちも強くあったり、あるいはまた、親子の適切な面会交流が、たとえ別れた元夫、元妻との交流であってもやはり子の健全な育成のためには重要だということがなかなか理解されない、そうした事情があるのだと思います。

 ただ、こうした事情があるときに、それに強制力でもって臨むことが本当にいい人間関係をつくっていくのかというと、強制力というのはまたこれは一つのストレスになっていくわけでありまして、強制ではなくて説得で、やはりそこは納得でこの交流ができるようにしていくことが非常に重要だと思いますので、やはり、別れた後も父は父、母は母なんですよということの理解とか、あるいは、連れ去られるような心配はない、こういうやり方で会わせるんですからとか、そういうさまざまな説得の工夫は私はたくさんあると思うので、そうした努力を精いっぱいやることが大切だと思います。

 それから、人身保護も、人身保護というのはある人を拘束しているのを引き離して裁判所に連れてくるという制度で、監護親が子供を監護している状態が人身保護に言うところの拘束に当たるかというのは、大変判断は難しいだろうと思います。

 いずれにしても、納得が大切と思っております。

070 石井淳子

 なかなか難しい御質問をいただきまして、また、かつて児童虐待防止法というのはまさに先生方がおつくりになった法律でございまして、そこにどう適用するかという御質問であるわけでございますが、一応、前提としまして、家裁の履行勧告に従わないというスタート地点がありますし、大変著しい、ひどい場合だという前提があるんだろうと思います。

 個別具体的なケースを見ていかないと、なかなか、本当にこれが児童虐待の定義に当てはまるのか、一概にこの判断は難しいところがございますが、ただ、先生御案内のとおり、児童虐待の定義のございます第二条、その第四号の中に、「児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、」そして「その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動」、これが児童虐待に該当するということでございますから、まさにこれに該当するような極めてひどいケースについては、当たり得るということだけは申し上げることができるかと思います。

071 馳浩

 まさしく、定義の特出しということになると難しいんですね。実は我々も虐待防止法改正案をつくったときに、例えば、子供に対しての直接の虐待じゃないんだけれども、親同士が激しい争いをしているということを見せることは虐待に当たるよというふうな概念を定義の中に入れたんですよ。したがって、まさしく石井さんがおっしゃったように、議員同士の議論の中で、私が今申し上げているのはこういうことですね、一方に全く無断で勝手に連れ去って、会わせない、それが子供の利益にとってどういう影響を及ぼすのか、これはやはり虐待の事案の一つとして認めてもよいのではないかという議論が煮詰まれば、これはまた特出しの書き方を、あるいは改正をすることもあり得べしなのかなと私は思っているということを申し上げさせていただきます。

 ちなみに、平成二十年に児童虐待防止法を改正したときの附則、二つ、いろいろありましたよね。一つは親権の問題で、今回実現いたしました。もう一つの、社会的養護の問題を充実するということもあります。したがって、児童虐待防止法についても、時代背景を踏まえて三年ごとに改正していこうじゃないかと。

 我々の想像、理解を超えるような虐待事案というものが出てくる以上はそれには対応すべきではないかという議論は、これは超党派の勉強会の中でもされておりましたので、ぜひ厚生労働省としてもその辺の理解を進めておいていただきたいと、まずお願いを申し上げます。

 さて次に、面会交流を支援する民間団体の取り組みを公的に支援する体制をしっかりと構築すべきではないかと思います。面会交流を渋る同居親の気持ちに寄り添って、不安を取り除いたり、面会時の安全を確保したりすべきであると思いますが、いかがでしょうか。将来的には、全国の家裁がある地域にすべて公的な面会交流センターを設置して、専属の専門員を配置すべきと思いますが、いかがでしょうか。

072 石井淳子

 お答え申し上げます。

 まさに、子の利益の観点から、離婚後も適切な親子の面会交流が行われることは極めて重要だというふうに認識をいたしているところでございます。

 厚生労働省では、平成十九年度から養育費相談支援センターを設置いたしまして、ここで養育費のみならず、面会交流の相談にも応じておるところでございます。その相談実績も、まだ数は少のうございますが、年々ふえてきている、そういう状況にございます。また、都道府県などを単位に設置をされました母子家庭等就業・自立支援センターにおきましても、ここでは専門の相談員を配置し、養育費や面会交流の相談支援に応じておりまして、ここも相談実績は上がってきております。

 今後とも、まだまだ専門の相談員を配置していない母子家庭等就業・自立支援センターがございますので、そこでの配置を進めるとともに、相談員の人材が大切でございます。その人材養成のための研修や関係機関との連携など、面会交流に関する相談支援体制の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。

073 馳浩

 わかりました。さらに進めていただきたいと思います。

 家裁の負担の軽減も重要です。例えば、最近、現役弁護士を家事調停などの非常勤裁判官として採用しておりますが、仕事がない弁護士の活用の点からも、より推進すべきではないかと思いますが、いかがですか。

074 江田五月

 最近、弁護士になっても就職先がないなどといういろいろな声があって、悲鳴も聞こえるんですが、こういう皆さんに仕事の場をもっとふやす努力、これを私どももしていく必要はあると思っております。

 今委員御指摘の家事調停官でございますが、これは、弁護士になっても仕事がないという者にすぐなってくれといっても、そうはいきません。というのは、弁護士で五年以上その職にあった者の中から日本弁護士連合会の推薦を受けて最高裁が任命する非常勤の裁判所職員ということでございますので、五年間は弁護士をやっていただかなきゃならぬわけです。しかし、そういう皆さんに、原則として週一日、所属裁判所で家事審判官と同等の権限で調停事件を処理していただいているというのが現状でございまして、この制度を活用することによって、裁判官の給源が多様化される、裁判官のなり手を多様化するとともに、調停手続の紛争解決機能を一層充実強化していくことはできると思っております。

 ただ、残念なことに、これが平成二十一年、再任を含んで十一人、平成二十二年、再任を含んで三十人。もっともっとふえてほしいと思っております。

075 馳浩

 大臣、いい答弁をしていただきました。もっともっとふえてほしいと私も思いますし、弁護士になって五年たっても仕事のない弁護士というのはいっぱいいるんじゃないんですか。

076 江田五月

 仕事のないという、そのとらえ方ですけれども、私は、弁護士になって仕事がないなどと言うなと。世の中、いっぱい仕事は、それこそ今、被災の現場へ行ったって、法律相談に乗ってほしいと思っている人はいっぱいいるんですよ。なぜ避難所に行かないのか。いや、行っていますと弁護士さんはおっしゃるかもしれません。

 いずれにしても、そういう思いで、これは公務員も、中央でも地方でも、あるいは企業にもあります。いろいろな、スラムといいますか貧困の地帯もあります、田舎もあります。弁護士の仕事は本当に、実は掘り起こせば幾らでもあるので、五年たっても仕事がないなどと弁護士さんに言わないでほしいと思いますが、現実には、五年たってまだ仕事がないという弁護士さんもおられるかもしれません。

077 馳浩

 この問題については、また別の機会にゆっくりと追及をさせていただきます。

 関連して、子供代理人制度の創設も提案をしたいと思います。

 離婚時の審判等で子供が親同士の紛争に巻き込まれた場合に子供の利益を代表する代理人を創設するものですが、いかがでしょうか。

 例えば、十五歳未満の子供が、本当は別居親と会いたがっていても、同居親に嫌われたくないから、会いたくないと調査官に話したりしております。このような場合に、しっかりと子供と寄り添って信頼を受け、その子供の本心を聞き出したり、何がその子供にとっての最善の利益かを考えて公的に表明してくれる人が必要だと思いますが、いかがですか。

078 江田五月

 重要な御指摘をいただいたと思います。

 両親が紛争の渦中にある、その場合には、子供の心情を思いやるゆとりがなくて、子供の心情、子供を取り巻く環境を酌み取る手だてがやはり必要だと思います。

 現状はどうなっているかといいますと、親権者の指定や面会交流等の審判をする場合に、家庭裁判所は、家裁調査官による調査などで子供の心情や子供の環境等を把握して、審判するに際して配慮しておりますが、しかし、今委員御指摘のような、子供自身が自分の利益を手続の中で主張するとか、あるいは子供の代理人の制度が、これはできておりません。

 しかし、ここから先が重要なんですが、今国会に家事事件手続法案というものを提出いたしました。きょうから参議院の委員会で審議を始めていただいているところですが、いずれ当委員会に来ると思っております。

 この法案では、家庭裁判所は、未成年者である子供がその結果により影響を受ける事件においては、これは、子供の陳述の聴取あるいは家庭裁判所調査官による調査その他の方法によって子供の意思を把握するように努めろ、そして、子供の年齢や発達の程度に応じて子の意思を考慮しなきゃいけないということにしておりまして、子供の意思を尊重する旨を明文で規定して、より子供の利益に配慮するということにいたしました。

 さらに、自分の気持ちや意思を的確に述べることができる子供については、親権者の指定や面会交流の審判の手続に参加をすることが可能になる、あるいはまた、裁判所は、親権者の指定あるいは面会交流などに子供を参加させた上で、弁護士を手続代理人に選任することも可能とする、こういう規定にしておりますので、こういう法制定ができましたら、委員御指摘の趣旨は実現されるものと思っております。

079 馳浩

 法律の成立を望むものであります。

 さらに、離婚後の子供との交流断絶が子供に長期的にどのような影響を与えているかという学問的追跡調査が海外にはありますが、日本には余りにも少ないんです。ここはしっかりと公的支援をして調査をさせるべきではありませんか。いかがですか。

080 江田五月

 日本でも、最近、面会交流の子供への影響についての関心が高まってきており、活発に議論されるようになってきていると思っております。法務省としても、このような議論の推移を見守っていきたいのですが、見守るというだけでは、これはやはり、単に拱手傍観と言われても仕方がない。

 そこで、そうではなくて、親子の面会交流を実現するための制度等に関する調査研究、これを委託いたしまして、現在報告書が取りまとめられているところでございます。この調査研究では、家庭裁判所での面会交流事件の分析のほか、民間の面会交流支援団体からのヒアリングなど、あるいは当事者からのアンケートなども実施をいたしております。

081 馳浩

 せっかく最高裁が来ておるので、聞きますね。

 裁判所が、監護、親権等、こういう決定をした後の子供の追跡調査に関する行政文書というものがありますか、ありませんか。

082 豊澤佳弘

 家庭裁判所で調停が成立し、あるいは審判が出されて、その後、それに従った形で履行がちゃんと当事者間でうまくいっているかどうかということに関して、履行勧告の申し立てがあれば、それらの件数については統計上把握はいたしておりますが、それ以外に、最終的に家庭裁判所での調停、審判の結果を受けて、その後当事者間でどういうふうに事態が推移しているかに関して、裁判所の方で把握しているということはないと思います。

083 馳浩

 そうなんです。ないんです、大臣。これは私は、すごく大事なポイントかなと思っているんですよ。せっかく裁判所の方で監護について、親権についての審判が下った後の追跡調査ということについては、これは最高裁の仕事ではないとは私は思うんですが、これは研究の対象として、その動向を探り、そしてやはり、その審判が子の利益にとってよかったのかどうかという検証を含めた調査というのは必要なのではないかなと思いますが、いかがでしょうか。

084 江田五月

 これはなかなか難しいことで、裁判というのはあくまで受け身の国家機能でございまして、何か訴えられればそれに対して答えはする、しかし、答えをした後々、その答えがよかったかという追跡は、裁判所にやってもらうというのは大変困難だと思います。これが刑事事件ですと、有罪判決になった場合のことですが、刑務所でずっと後、見ていくとか、あるいは保護観察所で見ていくとか、一定程度のことはできますが、そうでない場合にはなかなか困難。

 ただ、私が思うのは、裁判所も、地裁は確かにそういうことですが、家庭裁判所というのは、手続においてもあるいは性格においても社会化されている営みなんです。社会の中に分け入っていろいろな紛争を解決していくようなところがあって、したがって調査官もいますし、いろいろなことをやるので、そして少年事件の場合も家事事件の場合も、そこに今のいろいろな病理現象のケースがいっぱいたまっていて、そこから現場へ行って初めて見出すいろいろな解決の種が、宝庫がそこにあるというのは事実だと思うんですね。

 したがって、もちろん個人のプライバシーいろいろございますから、そうした事件を全部事件ごと社会に明らかにするというのは大変困難ですが、いろいろな形でそうしたケースの累積の中にある宝物を探り出して、そしてすばらしい世の中をつくっていくための素材にしていくということは、何か私たち考えなきゃならぬと思っております。

comments powered by Disqus