子どもを巡る紛争の解決に向けたアメリカの研究と実践ー紛争性の高い事例を中心にー

子どもを巡る紛争の解決に向けたアメリカの研究と実践ー紛争性の高い事例を中心にー(家庭事件研究会のケース研究272号149頁、2002年8月、小澤真嗣)」の149頁から151頁中程までです。

はじめに

 離婚する家庭が増えるにつれて、離婚後の親権や親子の面接交渉などを巡る紛争が増加している。 近年、我が国の家族に関する価値観は多様化し、家庭内の人権意識が高まるにつれ、紛争性が高く解決困難な事件が増えていると指摘されている。 二組のうち人組の夫婦が離婚に至るというわれるアメリカにおいても、子どもを巡る紛争は激しさを増している。 私は、アメリカ合衆国オレゴン州の家庭裁判所や関係機関を中心に家庭事件の処理を調査する機会を得たが、アメリカの裁判所で大きな話題となっていたのが、紛争性の高い家族(High Conflict Family)に対する援助であった。 そこで、本稿では、アメリカにおける子どもを巡る紛争の実情や解決に向けた様々な試みについて、紛争性の高い事例を中心に紹介することとしたい。

第1 アメリカにおける離婚と面接交渉の実情

 1970年代から、アメリカでは無責任主義離婚が採用されるようになり、離婚に対する法的・社会的な障害が取り除かれてきている。 また、女性の社会進出に伴って経済的に女性が自立することも可能となってきた。 1997年のアメリカにおける離婚件数は約120万件であり、1960年の約3倍にも及んでいる。

 離婚は、子どもにとって単に一方の親を失うというだけでなく、慣れ親しんでいた住居や学友今まで抱いていた家族のイメージ、経済的に安定した生活など、様々なものを失う体験となり、悲哀反応とよばれる心理的な影響が生じる。 両親が離婚した子どもは不安が強くなって過度に承認を求めようとしたり、自分が悪い子だから両親が離婚したのだと考え自分を責めたりすることがある(1)。 こうした離婚を経験した子供の状況について実証的な調査を行い、社会的に大きな影響を与えたのが、ワラーシュタインらの研究(2)である。 ワラーシュタインらは、未成年の子を持つ離婚した家族60組に対して、5年ごとに面接を行い、長期間にわたる離婚の子供への影響について調査を行っている。 このうち5年目の調査結果は、離婚後の生活によく適応し、心理状態が最も良好であったのは、日監護親と定期的に交流を持ち続けた子であることを明らかにした。 すなわち、離婚後も父母と良い関係を維持していた子は、自己評価も高く、親の離婚が原因で抑うつ状態になることが少なかったのである(3)。 この報告は、離婚後も父母が協力して子供を養育するのが望ましいという共同監護を後押しし、離婚は家族の崩壊ではなく、子どもにとって「ママの家」と「パパの家」の二つの家ができることであるという考え方を広げていった。

 こうした実証的な研究から、離婚を経験する子どもにとっては、①離婚についての説明(離婚は子供の責任ではなく、離婚後も両親との関係が保証されること)、②一定した生活パターン(面接交渉の日程は一定している方が望ましい)、③冗長的な支援、が必要だと考えられるようになった。 実際、アメリカでは、恐竜を主人公として離婚について優しく子どもに説明した絵本や、離婚について子どもにどう説明するかを解説したガイドブックが売られれている。 また、法的にも、非監護親には子どもとの頻繁な面接交渉が認められている。 例えば、オレゴン州法では、両親は別居後もこどもの養育の権利と責任を共有し、非監護親には子どもと継続的かつ頻繁な接触が保証されるとしている(Oregon Revised Statute 107.101)。 また、虐待などの例外的な場合を除いて、非監護親と子どもとの交流を促進する意欲のある者こそが看護者としてふさわしいと定められている(ORS107.137)。 更に、オレゴン州ポートランドでは、「面接交渉の標準」が定められており、それによれば、子どもの年齢に従って、①生後18ヶ月までは2時間の面会を週2回、②30ヶ月までは6時間の面会を週1回、③3歳までは隔週金曜日午後6時から土曜日の午後6時までの面会(4)、④3歳以上は隔週金曜日午後6時から日曜日の午後6時までの面会を「標準」とし、さらに夏休みには2週間の面接交渉が認められるとされている。

 最も、面接交渉の標準は全ての家庭に適する者ではなく、家族の実情に応じた面接交渉を認めるべきであるとされているが、私が見学した調査や朝廷の事例では、標準に近い形で、頻繁な面接交渉が認められているものが多かった。

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