各国の離婚後の親権制度に関する調査研究業務報告書

各国の離婚後の親権制度に関する調査研究業務報告書(一般財団法人比較法研究センター、2014年12月19日、稲垣朋子、小川富之、金亮完、栗林佳代、宍戸育世、田巻帝子、千葉華月、山口亮子、渡邉泰彦、菊本千秋、木下孝彦、不藤真麻)」の3頁です。

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はじめに

山口亮子(京都産業大学教授)

 欧米各国、そしてアジアの国々でも、家族法の改正が進んでいる。世界は経済交流、情報伝達の急速な進展により大きく進行しており、その変化は家族も例外ではない。しかし、夫婦や親子の関係に関して見てみると、その変化は唐突なものではなく、1960 年代に各国で始まった破綻主義離婚法の流れに端を発している。破綻主義離婚法の進展により裁判所が離婚を認めることに容易になると、各国とも離婚が増え、未成年の子の監護・養育、親の子に対する権利・義務を法的にどのように考えていくかが、各国の検討の対象となっていった。そしてその後、徐々に面会交流の進展、子の監護の権利・義務の共有、子の養育の共同での行使が法制度として成立していったのである。

 翻って日本を見てみると、協議離婚を認める国であるため、その原因は欧米の破綻主義離婚法の影響があるとは直接断言できないが、婚姻件数に対する離婚件数の比は大きく上昇している。人口動態調査によるその年の婚姻の数と離婚の数を計算すれば、1980 年の離婚率は 20%を切っていたのが、2012 年では 35%を超えており、毎年多くの未成年子が、親の離婚に直面しているという数値が現わされている。離婚に際し、ドメスティック・バイオレンスの存在、ひとり親世帯の貧困率の高さが顕在化しており、男女共に初婚年齢が上昇すると共に未婚率が増加し、少子高齢化が加速している。他方、生殖補助医療による子の出生も確実に伸びていっている。少数派として意識的に法の外に置かれている性的マイノリティーとされている LGBT の人たちの同棲、子の養育も、日本でも確実に存在している。さらに、子どもが被害に遭う事件も多発しており、親・親族による虐待・ネグレクトの対応件数は年々の増加しており( 2014 年は 66,807 件)、親子や家族を巡る状況は大きく変わってきていることが明らかになってきている。

 これに対し、日本民法の親族・相続編は、戦後の改正から基本的に大きな変更はない。法改正を経なくとも、現行法の解釈により、別居・離婚後の面会交流を認めるようにはなってきたが、協議離婚における家庭にそれがどのように影響を及ぼしているかは定かではない。2012 年に民法 766 条の部分的な改正により、面会交流と養育費を協議の内容とすることが定められたが、現状は、母子家庭において面会交流を取決めているのは 23.4%、継続しているのは 27.7%、養育費の取決めをしているのは 37.7%、現在も受け取っているのは 19.7%となっている1。親の離婚に対し子が取り残されていることを示すこの数値を今

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